今回は「トロントの奇跡」とよばれているエールフランス358便事故について調査します。
2005年8月2日にカナダで発生した事故です。
悪天候の中でトロント・ピアソン国際空港に着陸を試みたエールフランスの358便(エアバスA340)が滑走路をオーバーランし炎上。
43人もの負傷者が出しましたが奇跡的に死者を出さなかったというものです。
死者を出さなかった要因は客室乗務員たちの的確な判断と冷静な対応でした。
エールフランス358便事故内容と原因
悪天候の中をトロント・ピアソン国際空港の滑走路24Lに着陸を試みましたが、滑走路内で止まることができず300メートルほどオーバーランし停止。
着陸の衝撃で機体は大破し、漏れ出た燃料に引火し機体右後方から出火しました。
脱出する際に使う避難シュートは火災の影響と事故の衝撃で、8つある避難シュートの内2つしか使用できませんでした。
一部の乗客は客室乗務員の制止を聞かず、衝突の衝撃で開いた扉から2メートル近くの高さを飛び降りて脱出した乗客もいたそうです。
また避難誘導の指示に従っていた乗客も半数近くは手荷物を持って避難しようとしていました。
カナダ運輸安全委員の事故調査によって、エンジン、ブレーキ、スポイラー、逆推力装置には問題がなかったことが確認されました。
また当時は強風だったがそれだけの要因ではオーバーランは起こらないとされました。
では事故原因は何だったのでしょう。
- 地上300フィート で風が向かい風から追い風に変わったこと。
- 激しい豪雨で著しく視界が低下していたこと。
- パイロットはゴーアラウンドという選択を失念しており、着陸することだけを考えていたこと。
- 操縦を担当していないパイロットは着陸進入中に逆推力装置とスポイラーに関するコールアウトをしなかったこと。
- パイロットは雷雨の中を着陸するにもかかわらず、必要な着陸距離を確実には計算していなかったこと。
- 着陸予定滑走路が空港内で最も短い滑走路であったこと。
これらの複数要因が重なったこととパイロットの操縦判断ミスが重なり事故が発生したと結論づけられました。
死者がゼロだった理由
こんなにも客室乗務員の指示を聞かない乗客がいたのに12人が重傷、31人が軽傷、死者0で済んだのはなぜでしょう。
そこには奇跡ではなく客死と乗務員の機転と的確な判断があったからです。
機内の連絡設備も故障した中チーフパーサーを中心に乗客を前後の非常口に誘導。
さらに、右後方扉を担当していた客室乗務員は、いち早く火災を発見していたため機内放送が故障する前に
「機体後方から火災が発生しています。右後方の非常口から脱出を開始します」
と自らの判断で脱出を開始したことが多くの乗客の命を救ったといわれています。
また事故が起こって52秒後には空港消防隊が到着しており、迅速な消火・救助活動が行われたことも死者を出さなかった大きな要因でしょう。
負傷者は出たが乗員乗客全員が生還したことでカナダの運輸大臣のジャン・ラピエールはこの事故を奇跡と呼び、各メディアが「トロントでの奇跡」などと呼びました。
しかし実際はこれは奇跡ではなく客室乗務員の機転と的確な判断があったから死者が0になったんだと思います。
航空機事故に遭ったときどうする?
私たちが実際にこのような事故に遭遇したらどうすれば良いのでしょう。
以下の6つの事項を確実に実施すれば生存確率がぐんと上がるということです。
- 搭乗したら非常口の確認
- 離着陸時は起きて靴も履いておく
- 騒がず落ち着く
- 乗務員の指示に従う
- 緊急脱出時は手荷物は持たない
- ヒールなどの先の尖った靴は脱ぐ
今年の1月に羽田空港で大きな航空機事故がありました。
乗員乗客379名が搭乗し機体は全焼してしまいましたが死者は出ませんでした。
ニュースなどで流れていた機内映像では、大きなパニックが起きることもなく客室乗務員の指示に従って避難する様子が移っていました。
客室乗務員はいざという時の訓練を繰り返し実施しています。
自分の判断で動いてしまうと周りの人も危険に晒してしまうことになりかねません。
なので指示に従うのが一番大切だということを覚えておきましょう。
まとめ
今回は「トロントの奇跡」とよばれているエールフランス358便事故について調査しました。
奇跡といわれる裏には客室乗務員たちの絶え間ない努力があったんですね。
最後までおつきあいいただきありがとうございました。