今回は史上最悪の人災といわれているホテルニュージャパン火災。
その火災に立ち向かい多くの人命を救助した伝説の消防士高野甲子雄さんの功績と現在の活動を紹介します。
NHKのプロジェクトXに取り上げられ大きな話題になりました。
ホテルニュージャパン火災とは?
1982年2月8日未明、東京都千代田区永田町のホテルニュージャパンで、深夜3時過ぎに発生した火災です。
鎮火後に行った調査の結果、火災の原因は宿泊客の寝たばこと判明しました。
この火災が拡大した最大の原因は、防火設備の不備や従業員の初動対応の遅れが影響したと言われています。
防火設備のスプリンクラーは放水ヘッドだけが付いていて管は繋がっていませんでした。
火災を早期に発見するために設置してある火災報知器も故障しており作動しなかったそうです。
従業員への避難訓練等も行われておらず119番通報するまでに20分以上を要しています。
またホテルの建物の構造も複雑で避難経路が分かりずらい作りになっていました。
このような杜撰な管理から火災が拡大したため「史上最悪の人災」といわれています。
結果として33人が死亡し、34人が負傷するという大惨事になってしまったのです。
火災の延焼面積は約4,200平方メートルでした。
東京消防庁は前代未聞の4次出動を掛け、23区全域から600人以上の消防士を動員して消火活動にあたりました。
しかし初動の失敗と設備の不備が響いて鎮火までには約9時間を要しています。
伝説の消防士高野甲子雄
高野甲子雄さんは1968年には東京消防庁に入庁し、消防士としてのキャリアをスタートさせました。
高野甲子雄さんが伝説の消防士と言われる所以は、やはりホテルニュージャパンの火災での活躍でしょう。
NHKの番組、プロジェクトX「炎上 男たちは飛び込んだ 〜ホテルニュージャパン〜」で取り上げられ大きな反響を呼びました。
高野甲子雄さんは当時、麹町消防署永田町特別救助隊長として勤務していました。
特別救助隊とは消防士の中でも厳しい訓練と試験をクリアしたエリート集団です。
通称ハイパーレスキューといわれています。
その中でも麹町消防署は管内に国会議事堂など国家の重要ポイントを守るエリート中のエリートです。
ホテルニュージャパンでの活動
麹町消防署はホテルニュージャパンに一番近い署であったことから最先着隊として到着しました。
高野隊長達が現場についたときにはホテルの9階、10階の窓からは炎が吹き出している状態でした。
高野隊長は隊員に空気呼吸器の装着と救助ロープと空気ボンベを携行するように指示しました。
9階は熱と炎で侵入することが出来なかったため10階からの侵入を試みました。
10階の廊下で逃げ遅れた宿泊客3名を救出しています。
残りの宿泊客を吸湿するため屋上に上がりました。
屋上からロープを使い侵入する方法を選択しました。
炎の中に部下の隊員を送り込む。
この決断ができる高野さんはよほど部下の技術と知識を信用しているのでしょう。
しかし一度目の侵入では空気の残量が足りなく救出できませんでした。
二度目は疲労した部下に変わり高野さん自身が侵入しました。
高野さんは自身もやけどを負いながら客室から宿泊客を救出しました。
後日のインタビューで高野さんは救助に向かった時の心境を語っています。
「消防をやっている人の使命ですよね。そこに人がいて助けてくれって言っていれば、条件が整ってさえいれば行く。オレンジ(救助隊の服)の服が自分の使命感を思い出させてくれた。なんのために訓練していたんだと。」
麹町消防署の特別救助隊は66名の宿泊客を救助するという重要な役割を果たしました。
高野さんのリーダーシップのもと多くの宿泊客が救われたということで東京都知事賞と消防総監賞を受賞しました。
2009年に小金井消防署長を最後に退官しています。
高野甲子雄の現在
高野さんは東京消防庁を退官した後、防災士の資格を取得し啓発活動を続けています。
その活動の一環として、facebookの
「防災お助け塾 塾長 元消防 高野 甲子雄(たかの きねお) 」
というページを開設し防災活動について投稿されたりしていました。
しかし2021年の投稿を最後に更新は止まっているみたいです。
現場の経験を活かし東日本大震災など数々の災害現場でボランティア活動に尽力しているそうです。
消防団員や防災士の育成にも力を入れ、実践的な教育を通じて防災リーダーを育てています。
高野さんは中学生をターゲットにした防災の担い手の育成にも力を入れています。
「中学生トライアスリート」
と名付けられた活動は高野さんが現役の頃から続き定着しています。
今後も豊富な経験と知識を活かし正しい防災力をつける教育をお願いしたいですね。
まとめ
今回は史上最悪の人災といわれているホテルニュージャパン火災に立ち向かい多くの人命を救助した伝説の消防士高野甲子雄さんを紹介しました。
現役を退いた現在も防災活動の普及に尽力されていました。
東海東南海南海トラフ地震が予測されているなか一人ひとりが防災意識を高めていかなければなりませんね。
最後までご覧いただきありがとうございました。