2011年に焼肉酒家えびすで起きた集団食中毒事件について調査します。
現在多くの焼肉店では生肉の提供が厳しく規制されています。
この集団食中毒事件は規制のきっかけとなった事件です。
焼肉酒家えびす
経営会社の社名は「Food for us」から来ていて「得るより与えよ」という意味です。
これが企業理念だったそうです。
焼肉店の店舗数は事件前の2010年には神奈川県に進出し、富山、石川、福井と合わせ4県で計20店舗となっていました。
販売手法は一皿100円の豚バラや280円の和風ユッケなどの低価格メニューを売りに業績を急拡大させました。
前代未聞の食中毒事件
2011年4月21日以降に、焼肉酒家えびすの富山県・福井県・神奈川県の店舗でユッケなどを食べた多数の客が腸管出血性O-111による食中毒になったことが判明しました。
この焼肉酒家えびす集団食中毒事件では、死者5名、重症者24名を含む181人にも登りました。
1996年にはO−157という病原性大腸菌による食中毒がありましたので今回の病原性大腸菌が原因ではないかと調査が開始されました。
調査の結果、今回の病原性大腸菌はO−157ではなくO−111と判明しました。
そして原因調査が進むと今度は衛生管理に関する責任のなすり合いが始まります。
えびすの親会社フーズ社に肉を納入していた卸業者は大和屋商店。
大和屋商店の言い分は
「加熱用として出荷していた」
と主張。
しかしフーズ社は
「ユッケ用という認識で仕入れていた」
と主張しました。
では今回なぜこのような集団食中毒が起こってしまったかというと「肉の保管管理方法と提供方法の杜撰さ」です。
フーズ社と大和屋商店は、生食用食肉のトリミング(筋膜、スジなど表面を削り取る行為)を行っていませんでした。
トリミングとはO−111などの菌は肉の表面に付着しやすい部分を切り落とすことです。
その部分を削れば、生で肉を食べても食中毒を起こしにくいといわれていました。
しかしトリミングを行えば、コストは2割以上かさむことになるそうです。
つまり儲けを減らさないためにトリミングを行わなかった。
ということです。
調査結果と原因
その後調査が進み原因が追求されましたが「えびす」の店内からも「大和屋商店」からもO−111は検出されませんでした。
えびすに保管されていた未開封の牛肉からO−111が検出され、被害者の体内から検出された菌と遺伝子パターンが一致しました。
しかし菌が流通した原因の特定には至りませんでした。
えびす、大和屋商店の下記のような杜撰な管理が事件をひき起こしたのではないかといわれました。
どちらも食品を取り扱う会社としては管理が杜撰すぎますよね。
事件後の動き
焼肉酒家えびすは2011年5月に全店舗での営業を停止することを発表し業務改善に努めました。
しかし、営業再開の目処は立たず7月に廃業となりました。
2016年2月15日、警察はフーズ・フォーラスの元社長及び大和屋商店の元役員の計2名を業務上過失致死傷容疑で書類送検。
2月19日、富山地方検察庁は2人について嫌疑不十分として不起訴処分。
2019年7月8日、検察審査会は、不起訴処分となった2名について不起訴不当の議決。
2020年10月7日、検察庁はフーズ・フォーラスの2名について改めて嫌疑不十分で不起訴。
これにより9年半に及ぶ捜査は責任の所在がはっきりしないまま終結しました。
国による法改正
2011年10月1日に生食用牛肉の処理に関する基準が改定され、生食用加工設備の完全な区分け等の規定が盛り込まれ、原則として有資格者の監督下での処理以外が認められなくなりました。
また罰則も設けられ食中毒等を起こした場合は営業停止や刑事罰も適用できることになりました。
厚労省がやっと重い腰をあげましたね。
国のレスポンスの悪さも当時問題になっていましたね。
まとめ
今回は5人の死者を含む181人が被害を受けた「焼肉酒家えびすで起きた集団食中毒事件」について調査しました。
菌が流通した経路もわからず責任の所在もはっきりしない事件でしたね。
しかしこのような事件が起こる裏には必ずといっていいほど
儲けのために安全を蔑ろにする
という構図があるような気がします。
事件が起こる前の予防策を切に願います。
最後までご覧いただきありがとうございました。